アタマで考え論理的に正しい思考プロセスほど危険なモノはない 

本レビュー「直観を磨く」

著  田坂広志 版 講談社現代新書

もう、10年ぐらい前でしょうか?ハワイ発のストレスマネジメントであり、人が直面する様々な課題に対し、自分の内面の「記憶」を消去することで解決する、技法「ホ・オポノポノ」が紹介され、話題を呼びました。(出版当時にほぼ全書籍読みました)作家の吉本ばななさんなども実践者として登場され脚光を浴びましたが、「スピリチュアル」の域をなかなか出られず、ビジネス界での広がりは今一つといったところでしょうか?

本日紹介する、田坂先生の著書に登場する「直観を磨く」の直観とは、まさにホ・オポノポノで言う、インスピレーションそのもの。ホ・オポノポノでは、思考の中で浮かんでくる想念を、過去の記憶からくる「直観」と、神聖なる存在からもたらされる、「インスピレーション」を厳密に区分し、4つの言葉「ごめんなさい」「ありがとうございます」「許してください」「あいしています」を口にすることで、自己の内面を整え「インスピレーション」を招き入れます。

 

本書の著者田坂広志先生は、東大卒業後、原子力工学博士として同大学の院も修了。民間企業を経て米国のシンクタンク・バテル記念研究所客員教員就任~ 日本総合研究所の設立に参画し取締役を歴任されるなど、シンクタンク系のお仕事を歴任され、ダボス会議のメンバーにも就任されています。田坂先生プロフィール

こちらで扱われている、「直観」とはまさに過去の自己限界の中を生きてきた記憶に基づくものではなく、ゼロポイントフィールドにつながった、「賢明なもう一人の自分」からの声のこと。

東大工学部、大学院まで終了された先生の経歴から言って科学的、客観的データーに基づいて様々な思考を凝らし、研究し、発言し、それぞれのポジションで任務を果たしてこられたことは想像に難くありません。そう言った経歴の方が「直観」の重要性を説き、「直観」に信頼を寄せることを説かれると非常に説得力を感じます。

東日本大震災以来、論理的に正しい思考プロセスをめぐらすことだけが、正しい結果を生まない、もちろん論理的に正しい思考プロセスを否定はしないのですが、何かを選択するときそのプロセスを超えて、大事にすべきことがある、とそう考えるようになりました。それが、ホ・オポノポノでいう「インスピレーション」田坂先生のおっしゃる「直観」です。

 

賢明なもう一人の自分と対話する 七つの技法

田坂先生は、自分の中にいる過去から現在まであらゆる情報を記憶する「天才」は自分の中にいる。それが、「賢明なもう一人の自分」であると説明されています。

「答えは自分の中にある」迷ったとき、こういう言い方をよく耳にします。経営相談をお受けしていても、優れた経営者の方はおおよそ自分の中に結論めいたものを持ってらっしゃいます。もしくは、数分セッションで、実は「こうしたかった~」「こう考えていた」ということを自然とおっしゃる様子を拝見することが多く、確かに「答えは自分の中にある」なのです。

ただどうやってその答えを持っている自分と出会うか、明確に紐解いた書籍はありませんでした。本書は「賢明なもう一人の自分」を呼び出す技法を、読者がついてこれるように、事例を交えながら論理的、客観的にていねいに説かれています。

1.自分の考えを文章にして書き出す

2.心の奥の「件名はもう一人の自分」に「問い」を投げかける。

3.徹底的に考え抜いた後、一度その「問い」を忘れる

4.意図的に「賢明なもう一人の自分」を追い詰める

5.ときに「賢明なもう一人の自分」を禅問答をする

6.一つの格言を、一冊の「本」のように読む

7.思索的なエッセイを「視点の転換」に注目して読む

詳細は、やはり本書をお読みくださいね。(^_-)-☆

経営者は7つの人格を持て!

経営者の方にとってぜひ知って頂きたことが、本書の第一部、第六話に紹介されています。おそらくほとんどの方は無意識、無自覚になさっていることだと思うのですが、意識的にされるようになるとより効果があり、意図した売り上げや利益に結び付けることが容易になるだとうポイントが紹介されています。それがこれ

 経営者は複数の人格を使い分けよ!

こちらの書籍で年収5000万以上稼いでいる方は、TPOに合わせて装いを変えるように、人格も必要な場面に応じて使い分けているという事例を読んだところなので、ああなるほどと納得しました。

軸を持ち、一貫した姿勢で物事にあたることは当たり前、サッカーでゴールに向かう各場面で、常に同じポジションを守るスタンスでいては試合に勝てないのと同様に、衣装も振る舞いも、人格もビジネスで必要となる各シーンで使い分けること。

田坂先生は7つの人格として紹介されています。

1.思想 2.ビジョン 3.志 4.戦略 5.戦術 6.技術 7.人間力

考えてみれば、朝礼の時はどの自分でいるか、企画会議で最終意思決定をするときにはどんな自分でいるか?部下との懇親の際にはどんな自分でいるか、誰もが自分の人格を着かえてその場に臨んでいます。それを意図的に、スケジューリングしてみる。それだけで、自分も相手も一緒に居やすい、いい場が生まれます。

人生とはあなたが計画した時に起こるそれ以外のこと

 本書でこの言葉は、ジョンレノンの言葉として紹介されています。経営計画を作りましょうと口を酸っぱくして言いながらも、自分で計画したこと以外のことは人生でも経営でも実際起こりえますし、起こっています。それが普通です。 

 その出来事を、なぜこんなことが・・と悲嘆にくれることもできれば、”我々を導く『大いなる何か』の計画がある”、(本書から引用、原文は下村胡人の次郎物語。)と、逆境を不運ととらえずに、成長機会にとらえることができれば、それを人生の「幸運」に転じることは決して不可能ではないのです。

 実際に人間的に優れた方々というのは、過去すさまじい逆境だった時期を決して恨まず、嘆かず、あれがあったから今の自分がある、今のわが社があると、感謝とともに振り返っていらっしゃいます。

 何をやるか、何がやりたいかの前に、「大いなる何か」は私に何をやらせようとしているのか、

 これは個人のキャリアプランを考える際にも、わが社のミッションは何かを考える際にも持つべき優れた自分への問いかけではないでしょうか? 

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