自分なりの獣道を歩くことが当たり前の時代に北極星を見つけよう

本レビュー 直観と論理をつなぐ思考法

著 佐宗邦威 版ダイヤモンド社

直感と論理をつなぐ思考法 

ビジョン思考の方法論

すべては「妄想」からはじまる

いきなりびっくりする小見出しですが、こちらの書籍の第2章のタイトルです。この書籍、刊行は丁度1年前の3月。早く紹介をせねばと思いながら今日になってしまいましたが、昨日のタイトルと同じく「直感」をテーマに扱っています。この書籍、「直感」というよりも、ビジネスと教育とライフデザインに「妄想」活かす、思考法という方が内容を正しく表現していると思っています。

ただし、著者は東大法学部卒業後、P&Gに入社、「ファブリーズ」「レノア」などのマーケティングを担当後「ジレット」のマーケティングマネージャーに就任。同社で徹底したデータに基づく戦略設づくりに関わってこられた経歴の持ち主。データ思考、論理的思考を学び、それを身に着け生きてこられた方です。

しかし、そのP&Gでさえ、”利益の8割がたは、「新しいゲームそのものをつくったひと握りのマーケター”と言われているそうです。そう徹底したデータ分析に基づく戦略作りとその実行だけで得られる利益は2割に過ぎないのです。

そういった「戦略の荒野」で闘っている間はある種のゲームのような楽しさはあっても、持続可能性はないと断言されています。

人が自分の妄想を形にしょうという生き方が当たり前となる未来

「戦略の荒野」から離れ、著者がたどり着いたのは、ここ!人が自分の妄想を形にしようという生き方が当たり前となる未来。これは、少し前のベストセラー、著リンダ・グラットン「ライフ・シフト」にも言及されている、「社会の中の小さな問題をくみ上げビジネスになる時代」(原書と表現は違いますが)ということと重なっている。

実際に私のクライアントさんの多くが、この「自分の妄想を形にしようという生き方」を模索されている方々。その方々の「妄想」を組替え、ビジネスに育てる過程で、ホワイトカラーオジサン=いわゆる未来を予測して正解を出そうとする方々の攻撃に合わないよう、どう守るか、育てるかに神経をつかうことも多い。

「自分モード」の有無が決定打

この本にはそんな、自分の妄想を形にするための思考法が丁寧に語られています。それはそのまま、佐宗氏のかっての同僚、データ至上主義で「戦略の荒野」に生きる方や、PDCA大好きの「カイゼン農場」の中で「他人モード」で疲弊した方に「自分モード」を育てるための指南書のようにも感じます。

この妄想を形にしようとされる、イノベーター、創業者の中で時に、途中でブレだす人が一定いらっしゃいます。このブレがどこからくるのか、何をすればブレないのかがずっと気になっていたのですが、それが「自分モード」の有無でした。

「自分モード」を育てていないと、事業の途中で目先の採算に目が行き、器用な方はそこでも一定の収益を上げてしまうこと。でも結局「これがやりたい」という原動力のもとになっていた妄想からはどんどん離れてゆくので、どっちつかずになってしまう。そして、やめることもすすむこともできない状態になってしまう。

最も大切なのは妄想、そして妄想を育ててる根拠のない自信は「自分モード」から生まれる。

佐宗氏は成功するプロジェクトには妄想を持った人がいると言い切っています。

もとめられているのは「変化を受け流す力」

変化が速いとかではなく、コロナの出現でありえない事態がいつ起こってもいい時代に入ったと、多くの方も実感していると思います。

以下引用

「直線的な成長」が可能だったシンプルな世界では、限られた時間の中で生産性を高め、自ら決めたゴールに向かっていけばよかった。

中略

  このあやふやな世界では、トライ&エラーのサイクルを短くしつつ、そのインレーション(反復)を長期に渡って継続するという戦略が最も頼りになる。おそらく結果が出るまでは、長きにわたる停滞期が待っているだろう。ただし、そこをくぐりぬけるまで耐え続けた者には、爆発的な成長という恩恵が与えられるのが、いまの時代なのだ。

引用ここまで

私にはたくさんの妄想を抱え、自らの獣道をゆくたくさんの”同志”がいます。その誰もが道を外さず、爆発的な成長を迎えるその日まで耐えられる胆力、変化に対応するのではなく、受け流し我が道をゆく力をコツコツ淡々と育ててゆくこと。それが人生が私に求めている仕事です。

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