「腐る経済」より 自分の生き方をデザインする

デザインとは意志をもち 未来を選択すること

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」
著 渡邉格
版 講談社

 

◇現在の延長線上に未来はない

中田俊氏という日本一変わった税理士さんと知り合いました。

「学び場とびら」というメッチャ素敵なシェアスペースを創ったにも関わらず会員募集はほとんどせずに流れに任せたまま、最近は畑に「出社」しほぼ税理士業務はせず、という方です。

中田氏いわく、税理士業務はあと5年もすればそれこそ、優秀な会計ソフトにとって代わられてしまう。
その時こそ、学び場があることや、畑の経験という異分野の掛け合わせをしている経験が、税理士業務に活かされると。

確かに、「伝統的」な税理士業務は過去使ったお金の計算をし、節税という価値は生み出すけれど、その行為が新しい価値を生み出すことに通じるとは思えません。

そこよりも、時代の変化の風をいち早く察知し、変化の最先端に身を投じている税理士を顧問とすると、お金の計算以上の効果はありそうです。

そんな中田さんと、もう一名学び場に遊びに来ていらっしゃった方と3人で話をしていた時に、某冷食メーカーではスーパーの棚割りを埋めるために「新商品を開発しろ~」と指示があり、期日までに開発する、売れない、消費期限がくる、廃棄する、その繰り返しだ。とそんな話がありました。

タルマーリーと真逆だね。辛い行為だね。とそんな会話から、「タルマーリー行ってみたい。」「行こうか・・・」と初対面同士で話が進んていたところ、中田氏、タルマーリーなら、僕のトモダチのトモダチのトモダチとつながっているし、なんにもなしで行くよりも、僕と一緒にいたほうが、いろんな話きけますよ~。一緒に行きましょか?と提案が!

じゃそうしましょうか、と盛り上がり一気にツアーが企画されることになりました。

 

◇腐るパン

タルマーリーとは島根県の中山間地で、廃園になった保育園でパンと地ビールを創っているお店。
なんと週に2日は完全お休み、お店自体は年間2か月は休まれるという、パン屋の常識からはとても考えられない経営形態のお店。

この環境で、子供二人をかかえパン屋や地ビール製造が成り立つとはとても思えない…

タルマーリーを切り盛りしているのが、渡邉格氏と奥様の万里子さん。

いまや、どのパン屋さんでも見かけるようになった「天然酵母」と「国産小麦」でパンを作る、のではなく、野生の菌を自家培養し、顔の見える生産者が育てた自然栽培の小麦。

これ、中々できないことです。

なぜなら、発酵過程が一定ではない自家培養した野生の菌は、工業的に作れるパンのように決まった時間に発酵せず、季節にも天気にも影響されます。

材料費、手間、かける技術にかかわる適正な対価を考えると、コンビニで売っている100円の菓子パンと同じ大きさのパンであっても、数倍の価格設定をしなけえば、販売できない。

しかしその価格で販売することで、経営者も従業員も適正な給与をいただけることができるし、生産農家にも適正な価格で取引が維持できる。

つまり生産者の意欲がわく価格となり、それが農業を守ります。

 

◇自分の生き方をデザインする という意志

渡邉氏は最初から、自家培養の野生菌でパンを焼こうと思われたわけではありません。

最初は、ごく一般的な「天然酵母」「国産小麦」を看板に掲げたパン屋で修行として働きます。
しかしそこでは、天然酵母なのにビニール袋に入った酵母による発酵。

「安全」な国産小麦なのに、同僚の手は小麦によりボロボロに荒れ、渡邉氏は鼻炎に悩まされます。
そして朝の2時から働き始め、終了は夕方5時~7時、都合15時間の労働。

人に食を提供する側がこれでいいのか?

という疑問から彼は、酵母菌の自家採取に挑み、千葉でパン屋を起業。
適正な価格で販売し始めます。

東日本大震災を経て安全を求め、島根に移住。
地元に根づく糀と出会い、現在の野生菌を培養したパン作りに至ります。

それは、一軒のパン屋の起業に留まらず、地域全体の経済循環のスタートとなりました。

収量は安定しなくても自然栽培で生産した小麦やライ麦を適正な価格で購入するパン屋の出現は、地域全体の農業のスタイルも変えました。

パン屋が、パン屋の常識、業界の固定概念の中で生きていれば、決してこの経済循環は生まれなかったでしょう。

ただ、パンを創る、パンを食べる、その本来の営みに立ち戻り、自分の頭で考え、理想の経営と家族の暮らしをデザインをした結果がここにあります。

ここには、中田氏の税理士業務と同じく、わざわざ島根県智頭町まで行ってでも、出会いたい、食べてみたい、体験してみたいと思える「価値」があるのです。

デザインする、とは単に問題を解決するのではなく、理想を描きそれを実現するという意味が込められた言葉です。

腐る経済 現地レポは、ツアーののちにアップします。

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