レゾナンス読書「欲望の資本主義」Blog?No31

欲望の資本主義 「この星は欲望でつながっている」

 

 今日の一冊

欲望の資本主義 「この星は欲望でつながっている」

著 丸山俊一+NHK「欲望の資本主義」制作班

連休中ですが、どうしても書きたくなって、

共鳴ポイントを繋げて書評を書いてみました。

 お友達に勧められ購入した1冊。

 資本主義や市場経済に対し、日に日に高まる批判や、懐疑的意見にたいし、

答えでなく、ヒントを提供する。というコンセプトで制作されたNHKドキュメンタリーを書籍化した1冊

 誰か一人の著者がいるのではなく、若手経済学者の安田洋祐氏が、世界に深い影響を与えている3名のエコノミストや投資家へのインタビューがまとめられている。

 1名は世界銀行チーフエコノミスト 不平等と闘うスティグリッツ

 もう1名は24歳(当時)にしてチェコの大統領の経済アドバイザーとなった、

 セドラチェク、現COSB銀行マクロ経済担当チーフストラテジスト

 そして、最後に登場するのが無邪気な投資家スタンフォード。

ステグリッツ氏への共鳴ポイント

 冒頭のインタビューでスティグリッツはこともなげに、「神の見えざる手」は存在しない、とバッサリ、アダム・スミスをめったぎる。

 確かに私は経済学音痴だけど、普通に考えれば、アダム・スミスの需要と供給の関係で価格は決まるなんて、牧歌的な話だ。

 ステグリッツは言う、成長することが必要か?と特に需要が減退している先進国と言われる国で。

 ルールの変更こそ必要であって、いつまでも天然資源を採取し、その資源に依存し、減退する需要を喚起し、供給をバンバンして成長しようなっておかしくないか?

というのが彼の問題提起。

 そして、成長の指標をGDPに求めず、新しい成長の指標が必要だという。

 ルールの変更を適正に行えば、所得の大幅は増加のない状況下でも、新しいアイデァやイノベーションを生み出し、新たな娯楽や環境保護のつなげる、そういった社会価値を適正に反映する、「本物の市場経済」を作ることは可能だ。というのが、スティグリッツの主張である。

 つまり原因は市場経済ではなく、政治の問題というわけだ。

 次に登場するのは、セドラチェク。

 24歳だったのは、チェコ独立当時のこと。彼が登用されたのは、その能力の高さと相まって幼少期から航空会社に勤務する父の転勤で殆ど共産主義圏では育たなかったこと。

 セドラチェクの稀有なところは、経済を数式ではなく、例えばギルガメシュ叙事詩や旧約聖書、新約聖書、などを例に出し紐解くところ。

 例えば、欲しがりすぎるイブには需要の呪い、つくりすぎるアダムには供給の呪いがかけられ楽園を追放された、とか。とってもわかり易い。

 セドラチェクも私たちのような先進国ではもう成長は必要ないと言い切る。なぜかそれは、借金で買った成長だ。

 「借金で買った成長に意味がありますか?」

 セドラチェクのこの問いは、青天井の国債残高とマイナス金利政策、補助金まみれ、の日本にも突き付けられている。

 収支を合わせよ!今あるもので満足できる賢さを持て。先進国に対し発している最も大きなメッセージはここだろう。

三番目はスタンフォード

 最初の2名と違って彼は投資家。自分が投資した新しいテクノロジーに惚れ込み、そのテクノロジーやアイデァが社会を変えてゆくことに最大の悦びを感じている。

彼が投資しているウーパーの台頭でイエローキャブが倒産しても意に介さない。むしろ社会を変えている!という興奮の方が大きそうだ。

それでも彼は投資による社会の変容が楽しいのであって、―例えばテスラの自動運転車などーその向こうの人間の営みにはあまり頓着ない。(ように見える)それは、逆説的だが、彼は投資の目的がお金ではない、と言いきる。つまり儲かるのはデファクトであって、それ以上に社会に新しい価値が次々生み出される様を見るほうが楽しいのだ。

 彼の中には前述の2名のような深遠な人に対する問いはない。

 この本は、答えにつながるヒントを提供した、とインタビュアーの安田洋祐氏は序文で書いているが、答えは十分に出そろっている。

 スティグリッツは言う、

 「社会を変革するには、皆がおカネを追うと資本主義や市場経済が機能しなくなる ということを多くの人に理解してもらうことが重要だと思うからです」

 セドラチェクは言う、

  お金はそれ自体として存在しません。お金は関係に根差したものです。お金は人 と人の間にしか存在しない。中略 お金はエネルギーが形となったものでもある。 私や私の労働の価値ではない。お金は私が誰かに送ったり、誰かから送られたりで きるエネルギーの形です。

  安田氏が最後に問いかける、お金とは何かに対する、この2名の締めくくりの発 言がすべての答えとしか私には聞こえない。

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