山本さんとの面談のあと、おうちに帰って泣いたこともありました。

そう彼女から聞かされたのは、念願のお宿「京宿しらさぎ」が開業して1年以上たってから。
当時は、シーズンごとにインバウンドの数が増え、面白いように過去最高を更新し続けていた時期、でした。

お父様が使っておられた印刷工場を改装し、一棟貸しの宿泊施設を開業したいと彼女が相談に来られたのはその更に1年半前。当時は当たり前のように2020年にはオリンピックの開催。その後には大阪万博の開催。誰もが京都を訪れる観光客は海外からも、国内からもより増加してゆくと信じて疑わない時期でした。

日本政策金融公庫主催の「女性起業家のための創業セミナー」後の創業相談で出会った時の彼女もそうでした。「2020年にはオリンピック、25年には大阪万博、関西まで足を運んだ方の何割かは確実に京都に足を延ばすだろう、国内はもとより海外からの方々も。そうした大きな流れを見越しお宿を開業する」とのこと。

見せて頂いた創業計画書は、五条大橋と鴨川に面する眺めの美しさと、幼いころの思い出を語った、、、

「中学生のポエム…」でした。

彼女のひたむきな姿勢がくみ取れるかわいい内容でした。でもどんなお客様に、どんな悦びを提供するのかが無かった。

昭和に建てられた京町屋を、躯体だけ残し全面改装する費用は新築のそこそこ豪華なお家が立つぐらいの費用。改装期間は8カ月。
自己資金を何十倍も上回る借り入れが必要でした。
それでも、事業計画に記載する数字の辻褄さえ合えば、創業融資は借りられる。彼女には言わないけれど、そう私は思いました。

なぜなら、
当時の予測からすれば需要は確実にある。交通至便な立地。(最寄駅から徒歩1分、とうたえる場所でした。)目の前に広がる鴨川と、対岸に迫る比叡山、申し分のない借景。一棟貸しで一日一組でも月のうち8割稼働すれば、収支は合い、返済は十分可能。

でも、私は反対しました。
インバウンドの方々がどんどん京都にやってくるから。
オリンピックが開催されたら、
大阪万博が開催されれば、
だから、お客様が来る。
たら、ればでお客様が来る時期がしばらく続いても、ご融資の返済期間はそれよりずっと長い。
そして、たら、ればは、自分ではコントロールできない。
たら、ればの波が引いたとき、どうする?

どんなお客様に来ていただきたいの?と聞くと
「お金持ちの中国人です」と朗らかに応える彼女に対し、
たぶん、私は鬼の形相で怒ったと思います。

イジワルな気持ちではなく、長く事業を続けてゆくために、一番大切な「お客様」のことを考え、「お客様」に選ばれ続けるには何が必要なのか、そこをまず考える。そこにオリンピックも万博も関係ない!!
そしてなにより
お金を借りることで、不幸になって欲しくない。

いまさらに、おうちに帰って涙されたのは、事業計画の完成前後、だったのではないかと想像するのですが、面談のどんな回も彼女は私の提案した「宿題」をきっちりこなして来訪頂きました。そして笑顔で考えてきたこと、やってきたことを説明してくれました。

どんなお客様に、「京宿しらさぎ」ではどんな悦びを提供するのか、それを伝える仕組みをどうするのか。自分の頭でそこ、考えないと!
事業計画は、ただ開業から3か月は稼働30%でその数値は徐々に上がり6カ月目で80%にします。一年で安定軌道に乗せます。
それは、誰もが考えつくことで、エクセルと電卓があれば作れます。そこではなく、その売り上げをつくるために、「何をどう行動するか」を考えて頂きました。

「中学生のポエム」から、金融機関にだせる、経営理念を持ち、月次の資金繰りまで考えぬいた大人の女性の創業計画が完成しました。そして、翌年のシーズン前に開業するため躯体だけ残し建物解体を始める直前のタイミングで、金融機関からとてもよい条件でお借入れが決まりました。それも二つの金融機関から引き合いがありました。

京都から怖いぐらい、人がいなくなって2年が経ちます。
当時の彼女が楽しみにしていたオリンピックは風前の灯。大阪万博のことまで考えられない状況になりました。
でも、彼女のことだから、この状況でもきっと大丈夫。
ふとそんなことを思っていたタイミングで、動画が届きました。

京宿しらさぎ」元気でした!!

お時間のある方、動画はこちらでござます。作務衣姿もすっかり板につき女将となった豊田かおりさんが京宿しらさぎの魅力について語ります。

https://fb.me/e/3p24rtXI5

このご時世に少し強気な価格設定ですが、そこはまたの課題として、もし何かの心に残る記念日の過ごし方をお考えの方、検討候補のひとつに京宿しらさぎを加えてくださいな。


身体はって生きてます!

縁あって、小さな会社の代表に着任しました。そこでスタッフや関係先様へのご挨拶状として下のようなレターを作成しました。
自分の顔写真出すなんてと思われる向きもあろうかと思います、あえて出しています。
小さな会社は代表の顔写真こそがアイコン=目印だから。
わたしたちは、志は大きくとも、実態は小さい。同じサービスを展開している事業者はあまた存在する。
だからこそ、代表が「誰」で「何をする」のか、そのメッセージを発し続けることが、選ばれる理由の一つになる。そんな教えを小阪裕司先生から教えて頂き、人にも説いてきました。これからは私が実践する番です。


最後までお読みいただきありがとうございました。
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次回は6月1日にお会いしましょう。

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