未来を創る朝読書
令和元年7月18日
成功することを決めた
著 遠山正道
版 新潮文庫
~未来を創る教科書~
◇物語で伝える
これまで時々マーケティング講座で「スープストックトーキョーの「ペルソナ」は秋野つゆという女性なんですよ」とお伝えしてきまたが、同社を創業した遠山正道氏のこの書籍こそ、「未来を創る教科書」と言っていい1冊。
スープストックトーキョーは、三菱商事の商社マンだった遠山氏が関連会社であるケンタッキーに出向中に社内ベンチャーとして創業したスープ専門店が出発点。
そのスタートは企画書。
「スープのある一日」という、すでにあるスープストックトーキョーというお店を、そのさらに未来から語る物語形式でした。
ポイント1
⇒すでに出来上がった、あることを前提に未来を語る。
◇秋野つゆ降臨。
遠山氏は本書でこの企画書を描く以前、(書いたより描いたのほうがふさわしい)ふっと頭の中に、スープを大事そうに両手で抱え飲んでいる女性が「浮かんだ」そうです。
それが全ての始まり。
ケンタッキー・フライド・チキンに出向中、米国流をそのまま持ち込んだ日本の店舗で、「なんでこうなっちゃうの?」という疑問と、その打開策として浮かんできたのが「低投資・高感度」というフレーズ。
ケンタッキー・フライド・チキンに対してだけではなく当時の日本のファーストフード業界全体にあった大規模投資に対し、その対極の低投資で、お店を創る。
低い投資でお客様にお越し頂くには高感度、つまりセンスや知恵でカバーできないかと考えておられたそうです。
ひとりで、ゆっくりとスープを飲んでいる女性。
そこから湧き上がる膨大なイメージ。
彼はそのイメージを次々に人に語るのですが、食の関係者ではなく、デザイナーや映画監督に語り始めます。
ポイント2
⇒構想の初期段階で固定概念が強く否定されることが予想される相手には語らない。イメージを守る。
◇全て順風満帆なわけではない
社内ベンチャーとしてスタートしたスープストックトーキョー。
オープン1か月で目標700万の2倍を軽く超える15,005,000円を売り上げました。
「最高の味を出せればよい」
「お客様が喜んでくれればいい」
「現場が楽しく充実し、日々成長できればいい」
ストックトーキョーが現在のような多店舗展開はせず、個人事業として1店舗だけしっかりやっていければよい。
そういうコンセプトと規模でスタートしたのであれば、この現状で十分なのです。
しかし、当初の企画書に描いた未来はそのまだ先がありました。
その後、赤坂ドミナント三店の失敗や溜池山王店の撤退。
攻めにでようとした2004年に、「炎の70日」とばれる経営危機を迎えます。
3月までよかった業績が急に悪化、その原因が掴めない。
6月の業績はさらに悪く半年足らずで資金ショートという可能性も出てきたというのです。
その時初めて、情報が正確に伝わっていない、蔓延している不安感の存在に気付きます。
そして、意外かもしれませんが、このとき初めて現場の声を反映した店舗施策が採用されました。
また、時間帯ごとの全店の客単価、客数推移をリアルタイムで把握するシステムができたのです。
ポイント3
⇒現場の声を活かす
ポイント4
⇒主観に頼らずデーターを持つ
◇これからのこと
炎の70日を経て、現在のスープストックトーキョーは全国に約70店舗 年商75億の企業に成長しました。
それでも原点は、1997年の物語企画書 スープのある一日。
もっとも重要で、達成したいと考えることは、
「感度を共有した組織・顧客・パートナーの確立」
でした。
本書には炎の70日を経てコーチングをうけた遠山氏が描いた事業計画が紹介されています。
それは、絵本の挿絵のようなイラストで、これだけこの企業がスープにとどまらず、ネクタイやお弁当屋(それものり弁専門店)本屋さんなど多角化し、成長していても、「わからない」「特別」「参考にならない」と思う方も多いでしょう。
でも、キャッチした未来から物語を創る。
そこにはその人の個性・意味・背景が反映されていれば、叶うのだと、この絵は教えてくれているようです。
読書から未来を創る。
未来を読み取る。
8月8日18時30分~大好きな本好きのお友達、田中和枝さんと、
「タカラモノ」読書会を企画しています。
明日正式告知スタートいたします。
よろしくお願いします。