書評:「マーケティングとは組織革命である」  大儀と勝ち筋を明確に創る!

多くの会社の最大の問題は、神経伝達回路が破壊されていること。

いきなりのこの問題提起に、グサッと胸が突かれる思いの方も多いのではないでしょうか?私もその一人。本書は著者森岡毅氏がUSJ社時代、日本的組織での戦い抜いた経験から染み出ているエッセンスをまとめた内容。それまでプロクター&ギャンブル社(以下P&G社)のブランドマネージャーとして日本ヴィダルサスーンの黄金期を築き、同社の世界本社へ転籍し、世界を視野に、瞬時の判断の積み重ねで結果を残してきた森岡氏からすれば、第三セクター的組織風土が強く残るUSJ社での、意思疎通には本当に苦労されたのでしょう。

多くの会社の最大の問題が、神経伝達回路が破壊されていること。だから情報がスムーズに正しく伝わらず、分断された情報と限定的な知識をもって行っている。その中の誰にも悪意もなければ傲慢もない。みなさん本当にまじめに誠実に職務に当たられている。

そして次に響く言葉がこちら、

N01カンパニーなどと良く考えず軽々しく言わない。何をもって一番とするか?

これもよくあるお話。メンバーを鼓舞しょうとしてカッコいいスローガンを唱えることが簡単。しかし、何をもって一番なの?この定義がなければ、何をしていいか、がわからない。一昔前の需要が供給を上回っていた時代なら、カッコいいスローガンを勝手に実現してくれるような旺盛な消費者需要が湧いていました。それは古き良き昭和の話です。何をもって一番とするかその定義づけと、どうやって一番になるかの戦略=行動の優先順位。縦軸の組織に話を通し全社確認。横軸の各部署で展開する小さな施策の数々が織物となって織上がる。その全体像がそれぞれの仕方で共有され、端緒となる行動で実感が得られた時人は初めて納得する。

本書はこれまでの著作とは違い、随所に「組織」をどう動かすか、の要諦が書かれています。それは、テクニックやノウハウではなく、相手の意思決定が組織の最適を担えるよう変容するために自分は何を準備しどう動くべきかに徹して書かれています。まさにマーケティングは組織革命。

組織とはひとりひとりの能力を引き上げる装置である。

この定義。マーケティングを解いた書籍では中々お目にかかれない組織の定義。これ以外にも、組織内の関係は上下ではなく、共依存、など、いちいちななるほどと納得する定義ばかり。戦略はそれを正しく実行する組織があって初めて成立し意味がある。組織を動かすとはそのための行動を創るベースであるという当たり前のことを直球で教えてくれる、名著でした。

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