「愛でいけるやん!」特別なことをしていない、特別な会社

㈱宮田運輸の日常を追ったドキュメンタリー映画「愛でいけるやん」の上映会に参加しました。㈱宮田運輸は、2023年「人を大切にする経営学会」主催の第13回「日本で一番大切にしたい会社」大賞で審査委員会特別賞を受賞した企業です。
トラックに子供の描いた絵をラッピングし、交通事故を無くす試み、「子供ミュージアムプロジェクト」の企画企業としても有名な企業です。また代表取締役会長の宮田博文氏は吹田市倫理法人会の会長でもあります。

上映会は、子供ミュージアムプロジェクトを担当する女性の
「当社は特別なことをしている会社ではありません」という一言で始まりました。

■どんな人にもやさしい心があると信じていこう。

創業67年の宮田運輸。創業者は現会長のお父様。会長は子どもの頃からトラックが好きで好きで、深夜に起き布団を抜け出して長距離を走るトラックの運転席に忍び込み、運転手さんに頼み込んで長距離を走っていたそうです。
18歳、好きで好きで大好きなお父様の会社に入社し、現場~所長を経験。盛和会などにも参加し、経営者として結果を出し始めたころ、事故は起きました。
当時、「社長のいうことが7割はあたる」社内ではそんな風に言われていたそうです。ところが上手くいっているのに、人は辞める。社内会議で社長が投げたiPadが宙を舞い、壁に突き刺さるようなこともあったそうです。

大好きなトラックが人を殺めてしまった。

連絡を聞き、社長が病院に駆け付けた時、もうすでにベッドの回りにはご家族がいらっしたそうです。
「トラックを辞めてしまおうか」それぐらい悩み、落ち込まれたそうです。
「トラックが人を殺めてしまう、その事実は変わらないが、トラックを通じてできることがあるのでは」とそう感じ、ひとのやさしさを信じようと心のギアを入れなおされました。

■人のやさしさを信じるとき

事故はどちらに非があるか否かではなく、ほんの1秒の油断が招いてしまう。 そこに、やさしさと、余裕があれば…。
トラックの運転席に子供の絵を貼っている運転手の姿を観たことをきっかけに、子どもの描いた絵をラッピングする子供ミュージアムプロジェクトはスタートしました。
今では、運送会社だけではなく、建設会社や工務店では現場を隠すブルーシートに子どもの絵を描くことでプロジェクトに賛同される企業も出てきました。

■トラックに子供の絵をラッピングすることがゴールではない

ドキュメンタリー映画を鑑賞し、宮田会長のお話をお聞きし、ゴールは子どもの絵をラッピングすることになく、また、事故の減少の要因は子供の絵をラッピングすることだけではないことに気付きました。

ドキュメンタリーで語られていた取り組みは下記のようなものでした。
廃車にしてしまうような事故をおこしても、運転手に希望する新車があてがわれる。(もちろん自分の子供の描いた絵ラッピング)
出発時に安全点呼と共に、熱いコーヒーを子供の絵をラッピングしたタンブラーに注いでもらえる。
社内外、誰でも自由参加の月次の経営会議=みらい会議に参加できる。この会議は、決算書フル開示     雑誌「致知」(年間購読料@11,500円)を従業員360名全員に配布し(約400万)事業所別の読書会をコツコツと続けている。「読書会なんて、やってられないと」言って辞めた従業員は3名、うち2名戻る。      気になる出来事に対して、「社長ならこうするだろう」そう考えて動く社員がいる。

■ゴールは未来にある、そのための目的と判断、行動。

宮田会長がさんざんおっしゃっていた宮田運輸の経営の最大の目的は、「人をつくる」そのために人が幸せを感じる会社をつくるです。人の無限の可能性信じるから、「人を選ばない」。3名の採用枠に100名近い応募があっても採用は先着順です。
社会の受け皿になる。それは刑期を終えた方も受け入れる、という事も含まれていました。自分から辞めて戻ってくる人は受け入れる。人それぞれに温度差と時間軸の違いがある。成果を出し続けなければ認められない、では人は疲弊してしまう。不安や怖れをいだいた瞬間人は力を発揮できなくなる。例えば、「自分の子供だったらどうするか?」普通なら、懲戒解雇になってもおかしくないような不祥事に対して、そう笑いながらおしゃる宮田会長。「人は、誰かからかけて頂いた恩の自覚が芽生えてから本物になれる」とのこと。そして「今やっていることが「未来」からみてどうなのか?」今、黒字決算でよかったではなく、未来から自分たちはどう評価されるのか?常にその視点からブレずに日々に向き合っておられる、そのまなざしの向こうには、トラック~物流の未来だけではなく、地球の未来、そこに生きる子どもたちの未来を重ねていらっしゃることがひしひしと伝わってくるのでした。

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