商工会青年部活動が事業承継の土台を作る

事業承継の親父を引き受ける覚悟から

京都府中小企業事業継続・創生センターと京都府よろず支援拠点が連携し開催する事業承継セミナー&相談会のプロデュースをさせて頂きました。

3回目の会場となった城陽会場で事例発表、事業承継をする以前の想いと、承継以後のご自身の取り組み、そして承継者の支えとなった商工会青年部の存在についてお話しいただきました。

小さな企業の事業承継は税金や株の問題以上に、親父の造った経営の土台(借金も含めて)を覚悟をもって引き受け、これからの時代に合った自分なりのビジネスモデルをどのように打ち立ててゆくのか!にかかっています。

南部会場で事例発表される       ㈱協和電工いしづの三好社長

俺の背中をみても・・・なんにもわからんからのスタート

電気工事業を営む㈱協和電工いしづを事業承継した三好社長、実は根っからの野球大好き「文系男子」。㈱協和電工いしづの社長石津氏の長女麻衣さんと結婚された当時は、某家電量販店の店長。確かに石津家では電気屋のお婿さんを探されていましたが、電気屋=電気工事職人と電気屋=家電量販店という、お仲人さんの大勘違いが取り持ったご縁です。

三好家でも長男であった三好社長、石津姓は名乗らない代わりに、㈱協和電工いしづの名前は残します、=事業承継します、とお父さまに誓いご結婚。家電店量販店の店長を経験した後、事業に参画されます。

ところが、

石津社長は、中学生のころからラジオを組み立て、ブラウン管テレビの材料を日本橋で買ってきて製造するなど、根っからの電気工事職人。OITで手取り足取りではなく、背中を見て学べスタイル。なんにもわからん、三好氏は呆然としながら、背中を見ていたそうです。

そんな時、「わからんことあったら、商工会青年部に入ったらええねん」と声をかけられ、青年部活動に参加されるようになりました。

同じ立場の「仲間」がいることの安心感

そこで…会議、研修事業、地域イベント、などなど、奈良県出身の三好氏にとってはじめて地元で同世代の「仲間」ができました。同じ立場の仲間がいることその安心感から、肚くくって職人人生のスタートを切ることかできたと言います。

経営者は孤独とよく言われます。実際社内でどんなに慕われれていても、立場が違うので経営上の悩みや葛藤を社内であかせる社長さんは少ないと思います。事業承継前でもそれは同じ、社内でどんなに関係がよくても、同じ立場で話ができる「同志」はいない。

けれど商工会青年部であれば、社内の利害を超えたお付き合いができ、互いの切磋琢磨を感じながら自分の現在地を知ることができる環境です。

この環境が三好社長を育てました。

職人ではなく経営に専念を決意

社長を継ぐとき、「現場から離れ、職人ではなく経営に専念します」そう現会長に言い切られたそうです。この選択は、ただ電気工事職人として修業を積むだけでは出てこなかった選択です。商工会青年部活動を通じ多くの経営者の在り方をみて感じたからこそ、現場から離れることの意味を理解し、それを言い切ることができたのでしょう。

日本の事業承継の多くは、父ー息子の関係です。そして多くの父―息子は、コミュニケーションしているようで、肝心なことはなに一つ話せていません。もっとも一般的なのは、間に入った母親に「お父さんに言っといて」「〇〇に言っておけ」の伝言ゲームになっているケースです。

たとえ関係が社長と専務(部長や課長、平社員であっても)、二人になると「親子」関係が前面に出てしまい、感情的な要素が入ってしまうのです。

㈱協和電工いしづの場合は、義理の関係だったということ。三好氏が自らの選択に自信をもてていたこと。そのバックグランドに商工会青年部で培った活動があったこと。この3点が好循環となり、前社長は「口は出さないが見守る」、新社長は「必要な時はいつでも聞ける信頼感」それが従業員には安心して働ける環境を創りました。

理念の継承から技術の継承へ、先代が作った経営資源を土台に次の10年を創る。

㈱協和電工いしづをいちずに思い続ける三好社長のチャレンジはまだまだ続きます。

商工会青年部の果たす役割

減り続けている日本の人口、それに比例するかのように、中小~小規模企業も減少しています。その多くが地方地域でおなじみの「地元企業」です。2025年には6割以上の中小企業で経営者が70歳を超え、このうち現時点で後継者が決まっていない企業は127万社あると経済産業省は試算しています。

これは、遠い未来のどこかの国の話ではなく、また東京・名古屋・大阪のような都市部ではなく、全国どこにでもある普通の町や村=商工会地域でおこる話です。人口が減った、若い人が都会出てゆく、そんな一見大きな問題も細分化してゆくと小さな課題の集積だということに気付けるでしょう。

ただ楽しいだけでの活動ではなく、自分たちの生まれ育った地域でどのような存在感ある企業として自社を育ててゆくのか、そんな答えがすぐ見つからない問題を大真面目に考える。まず、1社結果をだそうと、一点突破で1社をメチャクチャ支えるのもいい。

とにかく、わが町には商工会青年部がある、自分の息子もあの集団なら親の自分が伝えられない「新しい波」と「考え方」を手渡してくれそうだ。会員企業からそう思われる存在になることが、地方地域の小さな企業の事業承継の大きな一助になるのです。

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